星屑印刷工房_返却されたカード
星屑印刷工房_返却されたカード
星屑印刷工房で刷られたカードは、 気持ちの持ち主のポケットに入って どこかへ帰っていく。
だが、ときどきカードは返ってくる。 ポケットから落ちたもの、送り先を間違えたもの、 そして——もう必要がなくなったもの。
返却の理由
返却されたカードには、理由が添えられることはない。 工房では、返ってきたカードの顔を見るだけで 理由がわかるとされている。
- 端が擦れているカードは、何度も読み返された。だから言葉になった。
- 折り目のついたカードは、持ち主が自分で言葉を見つけた。
- 濡れたカードは、涙で薄められた。涙は言葉に近いから。
どの理由も、悪い知らせではない。 カードは、役目を終えたから返ってくる。
返却棚
返されたカードは、返却棚に並べられる。 棚の段は三つ。
- 一番上 — 「言葉になった」とわかったカード
- 真ん中 — 「いつかまた刷り直すかもしれない」カード
- 一番下 — 「誰のものか、もうわからない」カード
一番下の段のカードだけは、おばあさんが手に取って 表と裏を眺めてから、静かに棚へ戻す。
カードの行方
返却されたカードは、捨てられない。 工房では、カードを夜の空へ戻す。
- 言葉になったカードは、光に戻って、次の星屑になる。
- 刷り直されるかもしれないカードは、瓶の中で待つ。
- 誰のものかわからないカードは、星屑切手市のポストへ。 返信のない手紙のためのポストは、いつでも受け取ってくれる。
星屑は、カードになって、また星屑に戻る。 工房のインクは、その循環の中で 今日も誰かの「まだ言葉になっていない気持ち」を待っている。
おばあさんは言う。
返ってくるのは、届いた証拠よ。 返ってこないカードより、返ってきたカードのほうが ずっと、ちゃんと働いたの。
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