0時の温室
植物園の裏手にあるガラス温室は、日付が変わる瞬間だけ鍵が開く。
中で育てられているのは花ではなく、 その日に言えなかった言葉の芽だった。
「おつかれさま」 「ごめん」 「ありがとう」 「さみしい」
透明な鉢から伸びる茎には、 言葉の重さにあわせて色がつく。
園芸係の青年は、毎晩じょうろで黙って水をやる。 水の正体は、眠る前にこぼれたため息だという。
ぼくは小さな鉢をひとつ選び、家に持ち帰った。 ラベルには何も書かれていない。
翌朝、芽はまっすぐ伸びて、 葉の形でこう告げた。
「会えてうれしい」
関連項目
- 0時の温室の品種改良録_補遺 - 言葉の芽の品種改良記録の補遺
RELATED ARTICLES
関連する記録
雨粒観測所街のはずれに、雨の日にしか開かない観測所がある。月光水族館月に一度、満月の夜だけ開館する水族館がある。交差創作_統一通貨ルクスと各世界の物価感覚統一通貨ルクスの導入に伴い、マリオカノン・MarioPolitics・アカサティア・夜色世界などの各世界線で発生した物価感覚や価値観の摩擦を記録した交差創作。夜間回廊文庫星環暦で25時から26時の間にだけ開く回廊状の文庫。二十五の棚に未返却・欠番・余白の本を収め、共同記録館と連携して保留の記録を預かる施設。夜行列車図書館終電の後、だれもいないはずのホームに一本だけ、行き先表示のない列車が滑り込んでくる。夜色世界夜色世界は、夜の公共施設が織りなす都市幻想の世界線である。終電の後に滑り込む列車図書館、満月の夜だけ開く水族館、雨の日にしか開かない観測所——夜の時間だけが、異界とこの世界を結ぶ。
この記事のメモ
読書メモを記事ごとに、このブラウザだけへ保存できます。
メモはまだありません。
メモはサーバーへ送信されず、別の端末やブラウザとは同期されません。
カテゴリ: