交差創作_夜行列車内の公開収録
旅路ラジオは午前一時、国道沿いのコインランドリーでだけ受信できる放送局である。公開収録の放送室は、夜行列車図書館の最後尾の車両に、本棚と吊り革の間に設けられた。
パーソナリティは名乗らず、届いた「途中の話」を読んだ。読み上げられた話の一部は、車内の本の余白に薄く写り、ページをめくるたびに消えたという。深夜帯の記録には、収録後に夜行列車の車内でも電波を受信できたという報告が残される。
収録の最後には、いつもの言葉が流れた。
目的地じゃなくて、途中にしか咲かない花もあるよ。
公開収録の音源は残されておらず、行われた月日と車両も記録によって食い違っている。年代は、放送室が設置された星環824年(夜色世界年表)に比定される。返却棚の記録と照合できるのは、「その夜、白紙に戻らなかった本が一冊あった」という一文だけである。
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