眠らない温室

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眠らない温室

眠らない温室は、夜になるほど葉が明るくなる植物を育てる市営温室である。植物は眠らない代わりに、来館者が眠れなかった理由を葉脈へ写し取る。翌朝には理由が薄い緑の模様となり、園芸係が静かに剪定する。

主な植物

  • 待ち葉 — 返事を待つあいだだけ伸びる細い葉
  • 逆咲き花 — 見送った人の方角へ花弁を閉じる花
  • 朝露樹 — 触れた人の夢の温度を実に残す低木

温室の案内札には育て方ではなく、植物を急かさないための言葉が書かれている。

夜間開園

眠れない市民は入場料の代わりに、使わなかったあいさつを一つ預ける。預けられた言葉は、鳴らない時計店で遅れた時計を直す際の油として使われるという。

関連項目

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小夜見渡船場小夜見渡船場は、夜にしか看板が読めない反転運河の渡船場である。待合所の壁には窓がなく、代わりに水面の反射が小さな時刻表を作る。旅人は出発時刻を尋ねず、どのくらい待てるかを船頭へ伝える。朝靄駅朝靄駅は、遠景市に入る列車が最初に停まる終着駅である。ただしホームの表示板には到着時刻ではなく、その列車が町を「どれくらい思い出しているか」が記される。乗客は改札を出る前に、窓に映った自分の顔を一度だけ見送るのが慣例である。かすみ舟便かすみ舟便は、反転運河を往復する小さな舟の配達便である。運ぶのは箱や手紙だけではない。船頭は岸の会話、濡れた靴音、渡れなかった橋の景色を布袋に入れ、必要な対岸へ届ける。雨音保存会雨音保存会は、遠景市に降る雨の音を採集し、季節ではなく屋根の材質ごとに分類する団体である。会員は小瓶に音を閉じ込めるのではなく、濡れた紙の重さとして記録する。紙を指で弾くと、その日の雨が短く再生される。遠景市アーカイブ_物価遠景市の物価は常設の青階段市場ではルクス建てだが、水曜市や湖畔忘れ物市では価格の代わりに「説明できない品」や「失くした話」が支払いになる。配達料は待たせた時間で決まる。遠景市アーカイブ_北窓劇場の楽屋ノート北窓劇場の楽屋ノートは、上演ごとに書かれる記録である。書かれるのは台詞ではなく、客席から預かった「言わなかった台詞」と、影が座席を離れた時刻だけである。

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