余白郵便局

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余白郵便局

余白郵便局は、本文の書かれていない手紙だけを扱う局である。差出人は便箋の端に「渡したい沈黙」の大きさを示す印を付け、局員は空白の幅と折り目の深さから配達順を決める。

配達先の決め方

宛名欄には地名を記さない。代わりに、相手が最後に見た窓の向き、好きな湯気の形、返事を急がない理由のいずれかを記す。局内の棚は住所順ではなく、手紙を開くまでに必要な静けさの順に並ぶ。

配達人

配達人は鈴を鳴らさず、郵便受けの影を少しだけ長くする。受取人がその影に気づかなければ、手紙は夕立図書館の返却台へ移される。そこでは読まれなかった空白が、しおりとして再利用される。

消印

消印は青い円ではなく、押した人の指先に残る淡い匂いである。雨音保存会は、強い雨の日の消印を音として保存している。

関連項目

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関連する記録

雨音保存会雨音保存会は、遠景市に降る雨の音を採集し、季節ではなく屋根の材質ごとに分類する団体である。会員は小瓶に音を閉じ込めるのではなく、濡れた紙の重さとして記録する。紙を指で弾くと、その日の雨が短く再生される。遠景市アーカイブ_北窓劇場の楽屋ノート北窓劇場の楽屋ノートは、上演ごとに書かれる記録である。書かれるのは台詞ではなく、客席から預かった「言わなかった台詞」と、影が座席を離れた時刻だけである。遠景市アーカイブ:切符の切れ端収集室切符の切れ端収集室は、駅や船着き場で拾われた切符の切れ端を保管する部屋である。切り離し方と余白の書き込みから、切符が使われた日の天気を復元する。逆光写本室逆光写本室は、紙に書かれた文字ではなく、その紙を読んだ人の影を写す工房である。窓を背にして机へ座ると、影が紙面に落ち、読み落とした行だけが薄く浮き上がる。写本師はその影をなぞり、原本とは別の「読まれ方の記録」をつくる。夕立図書館夕立図書館は、雨が降り始めてから閉館するまでだけ本を貸し出す図書館である。蔵書は雨粒の数に応じて棚から現れ、晴れた日には背表紙だけが残る。司書は返却期限を日付ではなく「次に同じ匂いの雨が降るまで」と伝える。かすみ舟便かすみ舟便は、反転運河を往復する小さな舟の配達便である。運ぶのは箱や手紙だけではない。船頭は岸の会話、濡れた靴音、渡れなかった橋の景色を布袋に入れ、必要な対岸へ届ける。

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