小夜見渡船場

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小夜見渡船場

小夜見渡船場は、夜にしか看板が読めない反転運河の渡船場である。待合所の壁には窓がなく、代わりに水面の反射が小さな時刻表を作る。旅人は出発時刻を尋ねず、どのくらい待てるかを船頭へ伝える。

待合所

待合所の長椅子には、以前ここで待った人の体温が薄く残る。空席博覧会の学芸員が年に一度、その体温を採集して展示する。待ちすぎた人には、船頭が温かい水を一杯出し、理由を水面へ流すよう勧める。

夜の便

かすみ舟便の夜便は、荷物よりも見送りの言葉を多く運ぶ。対岸に着いたあと、言葉を受け取る人がいなければ、舟は湖畔忘れ物市の岸へ寄り、翌朝の品として置いていく。

関連項目

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関連する記録

かすみ舟便かすみ舟便は、反転運河を往復する小さな舟の配達便である。運ぶのは箱や手紙だけではない。船頭は岸の会話、濡れた靴音、渡れなかった橋の景色を布袋に入れ、必要な対岸へ届ける。朝靄駅朝靄駅は、遠景市に入る列車が最初に停まる終着駅である。ただしホームの表示板には到着時刻ではなく、その列車が町を「どれくらい思い出しているか」が記される。乗客は改札を出る前に、窓に映った自分の顔を一度だけ見送るのが慣例である。反転運河反転運河は、岸から眺めると水が上流へ向かっているように見える遠景市中央の運河である。実際の流れは潮と同じ向きだが、水面に映る建物だけが逆向きに進むため、初めて見る者は橋を渡る足を止める。眠らない温室眠らない温室は、夜になるほど葉が明るくなる植物を育てる市営温室である。植物は眠らない代わりに、来館者が眠れなかった理由を葉脈へ写し取る。翌朝には理由が薄い緑の模様となり、園芸係が静かに剪定する。雨音保存会雨音保存会は、遠景市に降る雨の音を採集し、季節ではなく屋根の材質ごとに分類する団体である。会員は小瓶に音を閉じ込めるのではなく、濡れた紙の重さとして記録する。紙を指で弾くと、その日の雨が短く再生される。遠景市アーカイブ_物価遠景市の物価は常設の青階段市場ではルクス建てだが、水曜市や湖畔忘れ物市では価格の代わりに「説明できない品」や「失くした話」が支払いになる。配達料は待たせた時間で決まる。

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