自由国_創作特集
自由国_創作特集
古代王国崩壊直後の無環期末〜初環期に、光を誰にも固定しなかったと伝わる自由国の断片集である(説)。
はじめて読む人へ
一、空の座(無環期末・説)
自由国には王座がなかった。いや、座はあったが、誰もそこに座ろうとしなかった。
旅人が座を尋ねると、案内の者は空の椅子を指して言った。「これは誰のものでもない。だから、いつでもあなたのものだ。」
だが旅人が腰を下ろそうとすると、その者は首を振った。「座る必要はない。ここでは、座ることも自由のうちだ。」
空の座は、誰かが来るたびに少しずつ違う場所へ移った。国境がないので、どこまでが国なのか、誰にもわからなかった。
二、帰らなくてもよい約束(初環期・説)
自由国に来た者は、帰らなくてもよかった。去った者も、また戻ってよかった。
「光は誰のものでもない」と、出入り口の誰かが言った。「だから、あなたが持ってきた光も、置いて行っても、持ち帰っても、どちらでもよい。」
人々は光を集めず、七灯にも割り振らなかった。光はただ、人の間を流れて通り過ぎた。
記録には、自由国の灯の名簿は一度も作られなかったと残る。名簿がないので、誰が国にいたのか、後世にはわからない。
三、名のない往来(初環期・説)
自由国には統治の中心も、国境も、名簿もなかった。あるのは、来て、去り、また来る人々の足音だけだった。
ある者は王座を継ぐ国へ、ある者は七灯を守る国へ、そしてある者はどこにも属さず、自由国の空気のまま去っていった。
「あなたはどこの者か」と問われて、その者は少し考えて言った。「光がどこから来たか、誰も問わない国があった。」
その国が実在したかは確認されていない。ただ、光を誰のものでもないとした国の話だけが、口伝のように残っている。
これらの断片は口承と余白の伝承(説)として、確定の事実ではなく収められている。自由国の実在は確認されていない。
RELATED ARTICLES
関連する記録
この記事のメモ
読書メモを記事ごとに、このブラウザだけへ保存できます。
メモはまだありません。
メモはサーバーへ送信されず、別の端末やブラウザとは同期されません。