星環827年接続会議:辞任演説「灯りを返す」
**「灯りを返す」**は、星環827年7月7日に統一世界政府大統領ヴェルディア・アルセリオンが行った辞任演説。約十二分の演説は全世界へ生中継され、翻訳前の原音も併送された。
全文
六年前、私はこの場所で、互いの地図を破らずに同じ未来へ進むと約束しました。
その約束を守ろうとして、私は未来を一つに絞る機構を承認しました。単一未来灯は危機を予測しました。同時に、皆さんの昨日、言いかけた言葉、名づけられない夢を、同意なく借りました。返せると思っていた記憶は、借りるたびに薄くなりました。
私は設計承認に署名し、期限延長へ六度署名しました。報告の不足はありました。しかし、報告されないものを知ろうとしない制度を作った責任は、最終的に私にあります。
統一を、ひとつの灯りに集めすぎました。遠くまで照らすほど、灯りを置いた足元の影が見えなくなりました。
本日をもって単一未来灯を停止し、記録を独立監査へ開きます。奪われた記憶の返還を始めます。そして私は、統一世界政府大統領を辞任します。
これは責任から離れるための辞任ではありません。役職に居続けることだけが責任だとするなら、役職はいつか責任を隠す壁になります。調査への証言と記録整理には、役職のない一人として応じ続けます。
今日、私は席を離れます。暗くするためではありません。あなたがたの灯りを、あなたがたの窓辺へ返すためです。
次の地図には、中心を一つだけ描かないでください。迷える余白を残してください。そこに、まだ会議へ来られない誰かの道があります。
演説後
議場に拍手はなく、七秒の沈黙が置かれた。その後、文化主権院議長が辞任受理を宣言し、権限は星環827年接続会議_暫定七灯評議会へ移行した。
七灯塔はいったん全塔を消し、各世界の現地時刻に合わせて再点灯した。
旧就任演説との対照
大統領就任演説(星環816年)が「同じ未来へ進む座標」を掲げたのに対し、本演説は複数の道と迷う権利を認めた。二つの演説は共同記録館で並べて保存されている。
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