星環827年接続会議:ルメナシアの静かな翌朝
大統領辞任翌日の統一首都ルメナシアを、市民七人の視点から記録した短編。大事件の翌日にも、ごみ収集、朝食、始発便は続いた。
午前5時――点灯係
七灯塔の係員ミオは、自動点灯を使わず各世界の現地時刻を確認した。七つを同時に灯せば十秒で済む作業に四十分かかった。最後の灯りを点けるころ、最初の塔は朝日に見えなくなっていた。
午前6時――パン屋
文化環区のパン屋は「辞任記念パン」という看板を出しかけ、裏返した。代わりに七種類の生地を混ぜず、同じ籠へ並べた。売れ残った一個を空席の分として窓辺へ置いた。
午前7時――翻訳官
翻訳官サラは、演説中の「迷える」を前夜まで「進路選択可能」と訳していた。朝になって訳を戻し、注釈に「迷うことを失敗としない」と加えた。
午前8時――元大統領
ヴェルディアは夢見ヶ丘バス停行きの始発を待っていた。警護車列はなく、鞄には着替えと描き直した地図の複写だけがあった。白い葉を拾い、ポケットへしまった。
午前9時――評議会書記
星環827年接続会議_暫定七灯評議会の書記は、最初の会議が予定を三時間超えたと掲示した。「遅延」ではなく「全証言を記録中」と理由を書いた。
正午――街
市民は拍手も暴動もなく昼食を取った。七番目の塔について尋ねる子どもへ、教師は「どれが七番目かは、見る場所で変わる」と答えた。
街が静かだったのは無関心だからではない。誰か一人の声を待たず、自分たちの小さな音へ戻っていたからだと、旅路ラジオは夕方の巡回枠で伝えた。
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