透明な楽団
透明な楽団は、演奏者の姿が見えず、楽器の輪郭だけが舞台に残る楽団。
客席には音がどこから来たのかを当てるための小さな地図が配られる。演奏者たちは譜面より互いの呼吸を頼りにし、見えないことを欠点ではなく合図として扱う。
見えない者どうしの呼吸を合わせるため、本番前には必ず灯りのない部屋で静かに立って待つ。その時間が長いほど、最初の一音は確かな場所へ届く。
曲の間に鳴る生活音も大切な楽器とされる。月曜日の博物館から届く録音は、最終楽章のリズムを決めることがある。演奏が終わると、舞台には一枚の透明な譜面だけが残り、次の公演のための封筒にしまわれる。
記録
- 拍手は音を出さず、客が両手を胸の前で開閉して表す。
- 終演後、舞台には一枚の透明な譜面だけが残る。
- 楽譜は透明にする前に、誰かの忘れた拍子を一章だけ直し込む。
- 本番の間、楽器の輪郭は揺るがず、部屋の後ろまで音が透ける。
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