春崎ルイの詩集抄録
春崎ルイが残した未発表の短詩コレクション。
抄録の由来
春崎ルイは、BOOK OF OZAKI 第二章に登場する第二世代の尾崎継承者である。「深夜放送の遺児」の異名を持ち、ライブ中にMCを一切行わず、曲間にラジオノイズだけを流す手法で注目された。その音楽は、声よりも周辺音を重視し、遠い交通音や誰かが息を吸う音を曲の骨格として配置する。
本稿は、春崎ルイが残した未発表の短詩コレクションの抄録である。詩の多くは歌詞に使われる前に書き直されており、曲の完成形には残っていないものが多い。原稿はラジオノイズの録音とともに、尾崎継承機関アーカイブに保管されている。
短詩の抄録
沈黙について
沈黙は、言葉を探している時間ではなく、 言葉が居場所を探している時間。
この詩は、曲間の空白を「一つの楽曲として受け取る」観客のあり方を、詩の形で記したものとされる。
ノイズの間
遠い交通音は、誰かの生活の残り香。 チューニングの失敗は、機械のためらい。 息を吸う音は、歌う前の生活。
「歌う前の生活を残すため」という春崎自身の説明と、ほぼ同じ言葉で綴られている。
深夜放送の遺児
深夜の放送を聴いていた僕らは、 終わりのあとの静寂も、放送の一部だと知っている。
「深夜放送の遺児」という異名の由来となった詩。放送の終わったあとの静寂を、継承の象徴として捉えている。
未完成の詩
言葉は、言われないままで 誰かの朝に残っている。
この詩は書きかけで終わっており、二行目以降は空白のままである。空白のページには、春崎の手で「ここは音で埋める」とだけ書かれている。
表現の特徴
- 詩はすべて、主語のない短い文で構成されている。
- 完成形の歌詞と違い、句読点が多く残されている。春崎は「詩は読むためのもの、歌詞は聞くためのもの」と書き分けていた。
- 詩の余白には、録音の時間と場所が薄い鉛筆で記されている。詩と音は、同じ生活の断片として対で保管されている。
所蔵と閲覧
- 原稿は尾崎継承機関アーカイブに保管され、詩とノイズの録音は一組として扱われる。
- 抄録に収められた詩のうち、曲に使われたものは確認されていない。春崎ルイは、詩と歌詞を別のものとして扱うためである。
- 灰野レンは、この抄録について「沈黙を継いだ者の書き置き」と評したとされる。
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