星環827年接続会議:風のピアノ室の無署名曲
星環827年7月3日、風のピアノ室で誰も演奏していない曲が記録された。楽譜には作曲者名も題名もなく、七つの短い旋律が互いを追い越さずに続いていた。
採譜
最初の旋律は旅路ラジオの放送を受けた風が弾いた。二つ目は薄明圏アーカイブ_北岸灯台群の回転音、三つ目はBOOK OF OZAKI_地下録音編のテープノイズに由来する。残る四つは演奏のたびに順序を変えた。
楽譜を統一政府の自動編曲機へ入力すると、すべてを同じ調へ変換しようとして停止した。原調を保つ設定にすると、七旋律は初めて最後まで再生できた。
会議での演奏
星環827年接続会議_ルメナシア七灯会議では、各世界の代表が一小節ずつ担当した。技量も楽器も揃っていなかったため演奏は何度も途切れたが、欠けた箇所へ別の奏者が入ることは禁止された。
「休符も、その世界の持ち分だから」というのが採譜者の説明だった。
題名を付けない理由
文化主権院は辞任後、曲名を公募しようとした。しかし提案はすべて取り下げられた。無署名のままであれば、演奏のたびに異なる世界が最初の音を選べるからである。
楽譜の複製は燐光レコード店、尾崎継承機関アーカイブ、ルメナシア共同記録館に分散保管されている。
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