光る苔の庭
光る苔の庭は、足元を照らす苔を育て、夜道を穏やかにする共同庭園。
苔は強い光より、誰かが立ち止まったときの静けさを好む。庭師は踏まれた場所を叱らず、そこに平たい石を置いて休憩の目印にする。石の数が増えるほど、庭に残る静けさの場所が少しずつ広がる。
水やりの多くは寂しい小雨の日の仕事だ。苔ははねる勢いのある水を嫌い、糸のように落ちる雨を待つ。庭の水やりには朝焼け蓄音機の聞き終えた水を使うが、曇りの日の録音は、苔が甘くなりすぎるため半分だけにされている。
満月の夜には苔の光を小瓶へ少し分け、子どもたちが帰る道に置く。瓶は一人につき一つで、翌朝には回収して空を返す。小瓶の中の光を数えると、庭に居た人の中の静けさが分かるといわれている。
記録
- 苔の明るさは、庭を歩く人の声量に合わせて変わる。
- 採取は一人ひとつまみまでで、翌週には必ず植え戻す。
- 寒い夜ほどよく光り、最も明るいのは雪がしんしんと積もった翌朝。
- 庭を囲う垣根は、光を遮らないよう編み目を粗くしてある。
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