砂糖雨観測所
砂糖雨観測所
砂糖雨観測所は、遠景市に時折降る甘い雨を測る観測所である。砂糖雨は地面を濡らさず、傘の縁や手紙の折り目にだけ結晶を残す。観測員は降水量ではなく、町の会話が何回やわらかくなったかを記録する。
観測方法
屋上には白い皿が並べられ、雨粒の結晶から「迷い」「再会」「言い直し」の割合を読み取る。結晶を舐めてはいけないが、匂いを覚えることは奨励される。結果は雨音保存会へ送られ、雨の音と甘さの対応表になる。
注意報
砂糖雨が強い日は、道標の文字が親しげな呼び名へ変わる。道に迷った人は標識を信じすぎず、赤傘修理工房で傘の骨の向きを確かめる。骨が北を向かなければ、その日は帰宅を急がないほうがよい。
関連項目
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関連する記録
雨音保存会雨音保存会は、遠景市に降る雨の音を採集し、季節ではなく屋根の材質ごとに分類する団体である。会員は小瓶に音を閉じ込めるのではなく、濡れた紙の重さとして記録する。紙を指で弾くと、その日の雨が短く再生される。遠景市アーカイブ:雨上がり横丁雨上がり横丁は、雨が上がってから水が引くまでの間だけ現れる横丁である。水溜まりの映り込みを渡っていくと、昼間にはない店が並んでいる。遠景市アーカイブ:雪解け階段雪解け階段は、上の段から順に雪が解けることで知られる階段である。頂上の段に春が来てから、いちばん下の段が雪を脱ぐまでに一週間かかる。線路脇天文台線路脇天文台は、朝靄駅へ入る線路の脇に建つ小さな観測所である。ここで観測されるのは星ではなく、車窓から見えたはずのない光である。所員は列車の窓に残る指紋を数え、光がどの方向から現れたかを星図へ書き込む。路地気象楽団路地気象楽団は、天気予報を演奏で伝える六人組の楽団である。晴れは木管、雨は紙の擦れる音、視界の揺らぎは低い弦で示される。市民は楽団の練習音を聞き、洗濯物ではなく約束を取り込むべきか判断する。かすみ舟便かすみ舟便は、反転運河を往復する小さな舟の配達便である。運ぶのは箱や手紙だけではない。船頭は岸の会話、濡れた靴音、渡れなかった橋の景色を布袋に入れ、必要な対岸へ届ける。
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