逆さ時計塔
逆さ時計塔は、針が空に向かって伸び、文字盤が地面を見下ろす時計塔。
町の人々は塔の影を時計代わりに使う。午前は影が短く、午後には細長い針のように坂道を横切るため、店の開閉は影が各戸の敷居に届くかどうかで決められる。
夜になると影は塔の根元から空のほうへ立ち上り、町の人はそれを『星の読み』と呼ぶ。影が真っすぐ空へ届いて垂れる夜には、旅人は迷わず帰りの道を決める。
年に一度、塔は一分だけ逆向きに進む。その時に願いを言葉にしないでいると、願いは眠りを測る温度計の目盛りに記録されるという。針が戻った朝は、町の時計はどれも少しだけ灰色に見える。
記録
- 頂上の鐘は風が強いほど低い音になる。
- 時計の内部は、町から集められた古い懐中時計で組まれている。
- 目盛りの間には、町が急いでいた年の記憶が青い影で残っている。
- 逆さに動く一分の間だけ、塔の近くの言葉がほんの少し軽くなる。
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