薄明圏アーカイブ:消失船オルフェ号
オルフェ号は、星環799年にネオンプリマを出港し、境界航路上で消息を絶った郵便船である。船体は発見されていないが、積んでいたはずの手紙が現在も一通ずつ別々の場所へ漂着するため、「航海を終えていない船」として知られる。
船の概要
オルフェ号は十二人乗りの小型帆機船で、風見鶏郵便局から預かった越境郵便を運んでいた。公式名簿には船長、機関士、通信士のほか、水先人欄に二人分の空白がある。空欄が未記入なのか、氏名だけ失われたのかは分からない。
最後の航海
目的地はB級航路「朝の長い街」。出港時、薄明圏アーカイブ_北岸灯台群は正常な橙色を返した。しかし二時間後、同じ灯台が沖合から逆向きの橙光を受信した。船からの最後の通信は「帰路を先に届ける」という短文だった。
漂着する手紙
消失後、平均して年二通の手紙が薄明圏アーカイブ_浮標市場、灰青運河、北岸の岩礁などへ流れ着く。封筒は濡れておらず、消印の日付は過去と未来の間で一定しない。宛名の人物がまだ生まれていない例もある。
手紙は薄明圏アーカイブ_記憶貨物規格M2として保管され、内容の一部が薄明圏アーカイブ_逆光書簡集に収録されている。
八番目の灯説
霧の夜に北岸沖で見える八番目の光を、オルフェ号の航海灯とする説がある。灯守は応答を禁じられているが、青燐祭の夜だけ燐花の一群がその光へ向かうことが観測される。
帰港予告
偽の薄明圏アーカイブ_時間位相潮汐表には、しばしばオルフェ号の帰港日が記される。正規の観測局は帰港可能性を否定していないものの、「予告によって航路を固定すれば、船が帰っていたかもしれない別の時刻を失う」として日付の公表を避けている。
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