薄明圏アーカイブ:記憶貨物分類見本帳
薄明圏アーカイブ:記憶貨物分類見本帳
記憶貨物分類見本帳(きおくかもんぶんるいみほんちょう)は、星環709年に旧港記憶倉庫の最初の棚卸しの際作られた帳簿である。記憶貨物そのものを実物の見本として挟み込み、左頁に分類名、右頁に「その分類に入らない例」を記すという二組構成で編まれている。薄明圏アーカイブ_記憶貨物規格の祖型とされるが、両者の直接的な継承関係は確認されていない。
形態
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 判型 | 縦長の帳簿。頁は一枚ごとに切り離せる糊止 |
| 用紙 | 港の帳場と同型の厚紙。表装に防潮の蝋 |
| 構成 | 見本頁と注記頁の二組一対。四百二十区分に対応 |
| 筆跡 | 少なくとも四人の手で書かれている |
| 現況 | 原本は倉庫の東棚に断片が残る。完巻の所在は不明 |
見本は実物である。帳簿は「記憶を言葉で定義する」ことを避け、分類ごとに一粒の記憶貨物を挟むことで境界を示した。貨物を挟めない分類には空袋を留め、空袋にも分類名が振られている。
四版
| 版 | 年 | 変更 |
|---|---|---|
| 初版 | 星環709年 | 最初の棚卸しに伴い作成。分類十九 |
| 第二版 | 星環715年 | 「置き去り記憶」の区分を新設。手引き側が同時に書き直された |
| 第三版 | 星環739年 | 分類の追加と、行方不明欄の独立(星環733年の一覧を受けて) |
| 第四版 | 星環787年 | 保存期限の概念を導入。内容が薄れた貨物の扱いが記される |
各版のあいだに改訂の指示を記した文書は見つかっていない。改訂はいずれも棚卸しの直後に始まっており、棚卸しが改訂の動機であったと推定される(説)。
「入らない例」の欄
本帳簿の特徴は、分類を定義するのではなく、その分類に属さない事例を並べるところにある。第三版の注記頁には次のような記入が残る。
- 忘れた覚えのあるもの
- 二人以上が同じ夢を見たが、誰も内容を語らないもの
- 港の待合所に置かれたまま、読み手のいない頁
- 名前を失った人物の呼びかけの声
この欄は当初「備考」と記されていたが、第四版で「入らない例」と改められた。分類の境界は定義ではなく例外で示すという方針は、のちの薄明圏アーカイブ_漂着物分類および星環848年_記憶貨物分類基準の策定の書式に共通する。
欠落と復元
初版の四百二十区分のうち、頁そのものが失われた区画が七つある。第七区和第十二区の頁は星環800年代以降に写しで補われたが、写しの原典は不明である。薄明圏アーカイブ_第十三倉庫事件を受けて見本実物の扱いが変わり、事件後に実物を挟まない版が試験的に作られたとされる(説)。
研究史
分類見本帳が記録文化史の研究対象として再注目されたのは星環850年代以降である。それまで帳簿は倉庫の運用資料とみなされ、独立した記事を持たなかった。星環856年の記憶コイン公開目録の編纂中に、見本帳の分類名がそのまま目録の見出しへ転用されていたことが確認され、制度史の一次資料として扱い直された。
関連項目
RELATED ARTICLES
関連する記録
この記事のメモ
読書メモを記事ごとに、このブラウザだけへ保存できます。
メモはまだありません。
メモはサーバーへ送信されず、別の端末やブラウザとは同期されません。